薬剤部は調剤室、注射薬室、薬剤庫、製剤室、医薬品情報室に分かれています。また病棟にサテライト薬局(薬剤室)があります。薬剤師14名、助手4名が各部署に配属され業務を行っています。
平成22年度から薬学教育6年制薬学生は病院や保険薬局で実務実習を義務付けられました。
当病院も薬学教育協議会より受入施設証を承りました。
2ヶ月半に及ぶ実務実習では認定実務指導薬剤師の指導の基にチーム医療における薬剤師のかかわりを体験し、薬剤師職務に必要な基本的知識、技能、態度等を習得することができます。
1.お薬に関する事故防止の取り組み
お薬の間違いは致命的な事故につながることから、絶対に防止しなければなりません。当院では、お薬の取り違い、用量の間違いや重複した使用などを防止するために調剤支援システムを導入しています。その他にもさまざまな調剤上の工夫をして事故防止に努めています。
ハイリスク薬(特に安全管理が必要な医薬品)の調剤には処方オーダリングの注意喚起を促し、監査時に改めて見直すことでより確実な調剤を心掛けています。
2.患者さんへの情報提供
患者さんにお薬に関する正しい情報を認識していただくために、お薬手帳に貼る処方内容のシールと薬剤情報用紙を提供しています。また、特殊な薬剤については患者さん用の薬剤説明書も添えています。
3.医薬品の安全管理のための勉強会の実施
薬剤部では、医薬品に関する安全対策のために必要な情報の共有、個々における安全対策への意識向上等の目的で適時勉強会を実施しています。また、調剤室業務の話し合いを定期的(2ヶ月に1回)設けています。
当院では、全診療科の院外処方箋の発行を実施しています。皆様は医薬分業という言葉を一度はお聞きになったことがあるのではないかと思います。
医薬分業とは、皆様が診察を受けた後、医師から発行される処方箋を持って街の保険薬局に行き、薬剤師からお薬の説明を受けてお薬を受け取るというものです。患者さんご自身で保険薬局を選ぶことになります。
医薬分業によりお支払いの負担が少し増えることがあったり、病院と保険薬局に行く二度手間がありますが、次のような利点があります。
医師と保険薬局の薬剤師や院内の薬剤師が連絡しあってその専門性を生かし治療効果の向上や副作用の防止に役立てようとする制度です。以上のような利点を生かすためには、是非「かかりつけ薬局」をお決めになってご利用されることをお勧めします。尚、ご不明な点がございましたら、お気軽におくすり窓口にお問い合わせください。
調剤室では薬剤師が外来や入院の患者さんが服用するお薬を医師の処方箋によって調剤しています。
このとき薬学的見地から医師の処方箋をチェック(処方監査)し、疑問があれば確認したり、場合によっては処方変更してもらうという重要な業務を行っています。
合併症や病状によっては患者さんに多くのお薬が処方されますが、ある種のお薬は他のお薬と一緒に飲むことによって効き目が弱くなったり強くなったり、副作用が増強されてしまう危険もあるわけです(相互作用)。
処方監査では、重要なお薬の相互作用がおきないように患者さん一人一人のお薬の飲み合わせについても気をつけています。
当院は早くから病棟業務に取り組んでおり、1992年から小児科で服薬指導を開始しました。その後も、対象診療科を増やし、2008年からはすべての病棟で服薬指導(薬剤管理指導)を行っています。
ベッドサイドで入院患者さんにお薬の飲み方や薬効、副作用などを分かりやすく説明するほか、入院時に持参されたお薬の確認もしています。治療の妨げになるお薬や注意が必要なお薬はないか、飲み合わせが悪いお薬はないか等、医師をはじめ医療スタッフに情報提供を行っています。さらに、薬歴や検査値等も確認した上での処方確認、処方提案や質問対応等も行っています。
注射薬室では、医師が入力した注射処方箋に基づき、投与方法、投与量及び投与速度、混合時の安定性や配合変化、他の医薬品との相互作用等確認し、患者さんへ適切かつ安全に投与がされるよう努めています。また、医薬品オーダリングシステムによりアンプルピッカー(注射薬自動払出装置)による注射薬の取り揃えを行い、患者別、一施用毎の払い出しを行っています。
製剤室では市販されていない特殊製剤、及び病棟・外来等で使用する処置薬の滅菌や調製を行っています。これらの院内製剤は製造プロセスや使用目的等に従いクラスⅠ、Ⅱ、Ⅲに分類して、安全で安心かつ適正に使用されるよう管理しています。
薬物血中濃度モニタリングでは、患者さんの血液中のお薬の濃度を測定しながら治療を進めています。
また、院内感染対策として抗生物質や消毒薬の使用状況を把握し、感染対策委員会の院内ラウンドや他の医療機関との地域連携カンファレンスに活用しています。
高カロリー輸液や抗がん剤などの注射薬の混合調製も行っています。高カロリー輸液とは手術などで口から食事を摂れない、または栄養摂取の不十分な患者さんに対して栄養補給を目的として使用されるものです。これらの調製はクリーンベンチと呼ばれる無菌的な環境の中で行っています。
*がん化学療法;抗がん剤治療に関する全般的なことを行っています。抗がん剤レジメン(治療スケジュール)の妥当性を評価し、作成・登録をしています。抗がん剤治療の入院導入や外来での治療時に患者さんやそのご家族への情報共有や支持療法を含めた処方提案を行い安心して治療が継続できるよう我々薬剤師もお手伝いさせていただいています。抗がん剤調製は、抗がん剤調製室のケモシールド内において行います。基本的に閉鎖式器具を用いた調製と投与とし、患者さんもスタッフにも安心・安全な治療提供に努めております。 また、院内での多職種連携・共同勉強会や院外保険薬局との連携充実にも取り組んでいます。近年では、大学病院血液内科医師と看護部との密な連携を行い、ダラツムマブ皮下注の外来での初回導入を実施しております。
*緩和ケア;トータルペインの視点にたって、患者さんの思いなどを少しでも多く共有し、単に治療薬の話をするだけではなく、患者さんと素直な気持ちで向き合い、情報共有ができることを心がけています。アセスメントし、告知時期・がん化学療法中・がん性疼痛や今後の過ごし方など病期に合わせて薬剤師として緩和ケアチームとも必要に応じ共有し多職種連携の中で活動もしています。(関連病院の緩和ケア病棟とも連携)
医薬品情報室では患者さんに医薬品を有効かつ安全に使用するため、医師をはじめ医療スタッフに適正使用や副作用の情報を提供したり、中毒処置やお薬に関する質問の対応を行っています。
院内には薬事委員会が設置され、新薬や採用薬剤の有効性・安全性の確保や、適正使用のために薬事全般にわたり幅広く検討がなされています。
新しい医薬品の情報が、毎日製薬会社の医薬品情報担当者や厚生労働省、卸業者、専門誌、医薬品医療機器総合機構等から入ってきます。
これらの情報はファイリングされるとともに、随時院内各部署に伝達されます。
私たちはチーム医療の一員として、調剤・製剤・医薬品の供給と品質や法的管理、医薬品情報の収集と提供、服薬指導などを通じて、病院内で医薬品が適正に使用され、よりよい医療を提供できるように日夜仕事に励んでいます。患者さん本位の医療を常に心がけ薬剤師としての科学的思考に基づいて、皆様の薬物療法に貢献できることを心から願っております。私たち薬剤部職員がお役にたてることがありましたら、どうぞお気軽に声をかけてください。